鹿島槍ヶ岳、五竜岳縦走「衣と食と住を背負って、登ったり、下ったり。」3日目 下山

二時に目覚ましで目を覚ますと、風の音は聞こえるものの雨は止んだ様子。テントの中の明るさから推測するに、月も出ていそう。これはいけるなと相棒のテントへ行った所、起きてる気配がない。この野郎とテントを開けようとすると、またもや、さも起きてましたよ的な涼しげな声が返ってくる。よし、出発するぞ!

二日連続でベタベタなテントをしまい込んで、最終日スタート!周りは完全に寝静まっております。五竜山荘から唐松岳までは意外と遠くコースタイムで二時間半。スムーズに行ってギリギリ日の出に間に合う感じです。最初は緩やかな下りからスタートするも辺りは霧が立ち込めていて、ミスコースしないように細心の注意を払いながら道を進んでいきます。少し進むと森の中へ突入!何度かナイトハイクはしていますが、いままでは基本稜線歩きだったのでいいのですが、森の中は何が飛び出してくるのか分からない怖さがあります。しかも所々すごく獣臭い。。。見慣れない糞も落ちている。。。足早になるのも仕方ありません。早く稜線に出たい。。。

ビクビクしながら森を抜けていくとその先は稜線、、、ではなく岩場でした。これは完全に僕のミスなのですが、ヘッドライトの電池が切れてしまい、岩場でコースマークを探すのにとても苦労しました。この辺りは岩に白色の石が混じっているせいか、コースマークが黄色や赤色で記されています。それでも夜中にライトを手がかりに探していると、マークに見える岩の模様があったり、日中では間違えないようなことも暗いと起こります。次第に空が明るんできたので大事には至りませんでしたが、準備不足でした。気楽な稜線歩きを想像していたのですが、思いのほか険しい道にあくせくしながら進んでいきます。

出発時間が遅くなったり、暗くて時間がかかってしまったため、唐松頂上山荘目前の牛首と呼ばれる場所で御来光タイム!ここはここで眺めがよく、御来光を見る事ができそうなのですが、この日はあいにくの天気で、黄身を割ってしまった目玉焼きみたいなお日様しか拝むことができませんでした。でも雲が多くても漏れてくる朝日で染まる風景をみることはできました。僕は日の出そのものよりも朝日に染まる山々を見るのが好きです。

御来光も終わってしまったし、お腹もすいてきたので唐松だけの頂上へ行く前に山荘で朝ご飯を食べる事に。思えば、山で食べる食事もこれが最後。余っていた食材を使い果たすべく二人とも二人前以上は食べたでしょうか。これでエネルギー補給も十分です!

この山行四度目のサミット!唐松岳山頂へは山荘から十分ほど。道も整備された登りやすい道でした。しかし完全に雲の中で景色は全く見れず。写真をひとしきり撮り終えて下山です。ここからはさらに先の白馬岳への縦走路の分疑点があります。すぐ先には三大キレットのうちの一つ、不帰(かえらず)キレットという何とも恐ろしい名前をした難所があるのですが、近いうちにこの向こうへも行ってみたいものです。ちなみに二日目に通ってきた八峰キレットも三大キレットの一つ。もう一個は言わずもがな穂高の大キレットです。

唐松岳からは八方尾根を下って下山していきます。山上は雲の中でも下界は晴れている、そんな時はよくあります。この日も下は晴れ。下るにつれて日差しが強くなっていきます。途中に山の映り込みが有名な八方池がありましたが、上はまだ雲の中。八方池から下は遊歩道になっているので、登山客やら、ハイキングの人やら、はたまたヒール履いた観光客もいたり行楽のるつぼ状態。八方尾根は途中から長野五輪の滑降競技でも使われたスキー場になります。そこから先はスキー用のリフトを使います。三日間、岩やら石やらと戦い続けた足を、宙に投げ出し文字通り空中散歩しながらの下山。これはなかなか気持ちがいいです。下についてからは白馬駅から信濃大町へ電車で移動し今回の山行も終わりを迎えます。

終わってしまえばあっという間。一泊と二泊は全然違います。今回は小屋を起点に縦走したので、大量の水を背負うことなく、少しばかりは軽身での縦走でした。これが何日分かの水も背負っての縦走になれば足への負担は倍増。また違った行程を組む必要が出てきそうです。三日間がっつり山の中にいるのはとても刺激的でした。一度やってしまえば後はイケイケなので、またどこか縦走へ、そしていつかは一週間ぐらいの長期縦走も。

それでは次の山で。

一日目はこちらから。

二日目はこちらから。

鹿島槍ヶ岳、五竜岳縦走「衣と食と住を背負って、登ったり、下ったり。」2日目 後編

朝日を鹿島槍ヶ岳の頂上で迎え、そこから一気に下り、八峰キレット小屋へ。

小屋で一休みして、いよいよ五竜岳を目指します。まだかなり先に見える岩の塊、五竜岳。これからずっとにらめっこしながら進んでいくわけなんですが、その岩の塊っぷりにすっかりやられてしまいました。高さはそこまでないのですが、その佇まいが厳つくてかっこ良い。

一日目の爺ヶ岳の辺りは這松が生い茂り、他にもたくさんの植物が自生していましたが、八峰キレット小屋を越えた辺りから植物が減ってきて岩や石が増えてきました。時刻はまだ九時を回った辺りですが、東側からはどんどん雲が上がってきます。夏場は午後になると雷が発生する確率が高くなります。稜線上で雷に遭うと逃げ場がないのでこの時期は午前中に行動するのが鉄則のようです。立ちこめてくる雲を見ながら、焦らない程度に歩みを早めます。

G4、G5と呼ばれる難所を越えて、ついに五竜岳本体へたどり着きました。この頃には周りの山々は雲に遮られ、全く見えません。その方が登りに集中できるもんよって相棒が背中で語りかけてきます。それにしても下から見ると完全に壁です。

冷池山荘を出発して九時間で五竜岳山頂到達!時刻は十二時を回ったうきうきウォッチングタイムではありますが、活動時間を考えるとヘトヘトサミットです。西穂高の最後の一枚岩のような感じではなく、手が届く距離にいい感じに掴む岩がある登っていて楽しい登攀でした。ただ、所々掴むと外れる岩があったりするので、落石にも注意がいりそうです。ここもすれ違うようなスペースがあまりないので、混雑すると待機している時間がふえそうです。鹿島槍ヶ岳方面からくる人は余りいませんが、反対側の五竜山荘側からくる人はちらほら。皆さん空身なので、山荘に荷物をデポしてピストンで頂上を目指してくる人が多いようです。

五竜山荘側は完全に雲の中でした。視野30mぐらいでしょうか。頂上付近は少し岩場が続きますが、そこから先は緩やかな下り坂。午後一時過ぎにやっと二日目の宿泊地五竜山荘へ到着です。昨日より平らな所にテントを張ります。テント場自体は景色の良さそうな所にあるのですが、すべては雲の中。時間的にはまだ昼飯ですが、気分的には夕飯な食事を作ります。やっぱりちゃんとした食事はありがたい。心が休まります。

予定では明日はのんびり起きてのんびり下山でしたが、今朝の朝日がすばらしかったのもあり、唐松岳山頂で日の出を見ようと言う話に。逆算すると二時半にはここを出ないと間に合わない計算。今日のスタートよりも三十分ほど早め。せっかく山に来たのだから朝日見ないのはもったいないので、明日も暗闇の中の出発になりそうです。

予定が決まりテントに戻ると、なにやらポツポツ、テントをたたく音が。天気予報では今日は昼から雨の予定。予報がばっちり当たり雨が降り始めました。おまけに風もちょっと強め。雨脚が弱いうちにテントを留めているペグの確認をして石を多めにのせて、雨音を子守唄に眠りにつきます。長い一日でした。

明日はいよいよ最終日

鹿島槍ヶ岳、五竜岳縦走「衣と食と住を背負って、登ったり、下ったり。」2日目 前編

一日目に扇沢から種池山荘、爺ヶ岳経由で冷池山荘にてテン泊。 二日目は鹿島槍ヶ岳の山頂で御来光を見るために、二時に起床!お天道様はまだ大殿籠ってらっしゃいますが、前日の空を遮っていた雲はほとんど捌けて、且つ、その日は満月だったためとても明るく、ヘッドライトの明かりがなくても準備できるぐらいでした。八月と言えど、山の上は秋の気配。薄手のフリースを着て、夜露に濡れたテントを撤収していきます。夕食の時に作っておいた梅粥を掻き込んで簡単に腹ごしらえ。濡れたテントの重さを肩に感じながら、でも疲れが抜けた足で軽快に二日目スタートです!

冷池山荘からは鹿島槍ヶ岳までは稜線の上をひたすら歩いていきます。途中ので布引山を一休みして先を目指します。後ろに目をやると朝一へばっている相棒と、昨日歩いてきた稜線が一望できます。山荘からはぽつぽつとライトの明かりが見え、御来光を見ようとする後続の登山者の気配が感じられます。 地平線からおはようございますの挨拶が聞こえて来そうな頃、最後の一歩を頂上へ。すると東側から「急いでー(日の出)まだ間に合うよー」の声。太陽から声かけられたかとびっくりしましたが、先に登頂していた老夫婦からでした。てっきり一番乗りだと思っていたので、不意をつかれました。

北には、今日の目的峰の五竜岳とそこに繋がる険しき稜線、西には鹿島槍ヶ岳の影が映り込んだ剱岳と立山、そしてまん丸なお月様。南には今日までに歩いてきた道、遠くには槍ヶ岳の姿も。空には朝日に染められたペラペラした雲が浮かんでいました。相変わらずの筆舌に尽くせない風景が広がります。 つかの間の自然のエンターテイメントを堪能して、次へ向かいます。この鹿島槍ヶ岳は双耳峰なので、まずは南方を目指します。ここまでは緩やかな登りが続きましたが、ここからは一気に岩場へと変わっていきます。

双耳峰の二つのピークを繋ぐ少し低くなっている所を鞍部といいます。鞍部からみた鹿島槍ヶ岳北峰は冷池山荘から見た印象と全く違います。こちら側から見るとごつごつした岩山そのもの。そしてこれからずっとこのような岩山が五竜岳まで続いていきます。 南峰と縦走路の分疑点に荷物をデポして空身で南峰頂上へ。控えめにサミットポーズをしながら、頂上から北側を見下ろすと小さく八方キレット小屋が見えます。そこまでは怒濤の下りが続きそうです。

キレット小屋に泊まっていたであろう登山客と何組かすれ違いますが、この辺りは道が本当に狭いのでかなり神経を使います。この時間帯はまだ人が少ないと思われるので、まだ助かりますがツアーの一個団体がいれば、それだけで時間がかなりかかりそうです。一休みすると目の前に五竜岳。あそこまで今日中に行けるのか不安になるような距離です。ここからは八方キレットの核心部!

もう壁ですね。岩の壁。背中には20キロぐらいの荷物を背負っているわけなので、バランスを崩さないように注意が必要です。岩とか鎖とか梯子とかアスレチック要素のオンパレード。やっている時は無我夢中なんでそこまで恐怖感を感じる事はないんですが、冷静に写真を見返すとえらい所だなーと背筋に冷たいものを感じます。 こういった岩場を抜けた後に出くわす人や人工物には多大な安心感を感じます。小屋に出た時、小屋番の人達が布団を屋根に干している所でした。この時で八時半。三時頃から活動しているのですでに五時間ほど動きづめ。ちょっと長めの休憩をして遥かな五竜を目指します。

二日目後編へ続きます。