槍ヶ岳山行「甘くない北アの盟主」二日目

雨の中雪渓を延々と登り続けた一日目を終えて、槍ヶ岳はもう目前!

山行二日目、山小屋の朝、三時起床。雨は夜うちに上がりましたが、山は雲の中。山荘のすぐ隣にいるはずの槍ヶ岳ですら霞み気味です。景色は期待できないですが、この日の出前のモヤに覆われ青く染まった山が好きです。さて、午前四時、僅かな望みを胸に槍ヶ岳本体へアタック開始です。

まさに岩山!草一本生えていない頑強は岩肌に取り付き登っていきます。ここから先は手と足をフルに使って登っていくことになります。前日散々雨が降っていた割に、岩肌はそこまで滑りません。岩だけでなく鎖、ボルト、鉄の梯子とハードコアな素材のオンパレード。そこに軟弱な手をかけて足をかけ上へ向かいます。近頃始めたボルタリングの成果もあってか、心なしか軽やかに手と足が動きます。体の動きもスムーズ。白い矢印に誘われながら進むこと三十分。

登頂!久々の二人でサミットポーズ!この瞬間約2メートル槍ヶ岳が高くなりました。

お天道様を後ろに従えた燕岳。北鎌尾根を超えていく雲。雲海に埋もれる穂高、上高地。雲を頭に載せた笠ヶ岳。見渡すと登ったことのある山が結構あることに驚きます。

いい写真ばかり載せてますが、実際は八割方、雲の中で何も見えませんでした。気温もそこまで高くなく、風も穏やかだったので、頂上で一時間ぐらい粘り、雲が切れた隙を狙ってパッシャリ。岩肌の茶色、黒色、森の緑、雪と雲の白、朝焼けの淡いグラデーション。夏山とも冬山ともまた違う、残雪期の色彩豊かな景色が広がっていました。雲ひとつない快晴の景色も素敵ですが、雲があると表情があってこれまた素敵ではないでしょうか。

さて、行きは良いよい帰りは怖いということで下山です。

実際登りよりも下りのほうがはるかに危険で危なかったです。高所恐怖症の人にはオススメできない道(崖)を下っていきます。こんな険しい所でも夏場は行列ができるほどの人が押し寄せるようです。ハシゴ待ちで三十分とか。降りてから、明るくなった山を見上げると山肌にポツポツと白い印があります。ここを登っていったんですね。下からみるとホンマかいなって角度しています。昨日の雪渓もですが、先が見えないほうが、次の一歩に集中できるので変な恐怖心とか、心が折れたりしないので、気楽にいけるのかもしれません。

山小屋に戻り、下山の準備をして、ふと気づくと雲はなくなり、頂上からは見えなかった穂高岳が大喰岳越しに見えています。岐阜県側の双六、笠ヶ岳方向も見えています。なんともいじわるなタイミングです。

 

 

昨日は真っ白で何も見えない中登ってきた雪渓も今日は上からしっかりと見えます。よくみるとなかなかの急斜面&ロングディスタンス。よく登ってきたもんだと相棒と感心しながら、上高地まで22キロの道を戻って行きました。行きは九時間で来た道を帰りは七時間ぐらいで歩き切りました。

全行程44キロ、合計16時間の長丁場でした。しかし長かった。雨は本当に余分でした。でもそれも山ですから仕方ない。槍ヶ岳は山を始めた時からの憧れの山の一つでした。それをまさか一年もしないうちにそれも残雪期に登ることになるとは全く想像していませんでしたが、この時期に来てよかった。今度は夏にどこかからか縦走で槍ヶ岳に来たいものです(上高地からだと遠すぎるので)。

それでは次の山で。

槍ヶ岳山行「甘くない北アの盟主」一日目

6/18.19で槍ヶ岳に登ってきました。

相変わらずの早出で、岐阜を二時に出発し、上高地に着いたのが五時頃。沢渡駐車場で急々と準備をし、始発のバスへ乗り込みます(上高地はマイカー乗り入れ規制をしているのでバスかタクシーでないと入れません)。二十分ほどで上高地バスターミナルへ到着。奥穂高岳山行(後日アップ予定)以来一ヶ月ぶり三度目の上高地入りです。本来であれば上高地は高地リゾート。昼間はハイソな方々がたくさんおられますが、この時間帯は50リットル以上のザックにアイゼン、ピッケルを付けたゴリゴリの山屋さんだけ。皆思い思いの方法で荷物をまとめ、体をほぐしています。まるで部活の大会の朝の様。

上高地バスターミナルから名所河童橋を抜けてハイキングコースへ入っていきます。ここからが長い。明神館、徳沢、横尾小屋と一時間毎にチェックポイントを通過していきます。途中野生の猿に襲われそうになったり(近づきすぎました)、三ツ矢サイダーみたいな色をした川を通り越えたり、雪がなくなり露になった岩肌、新緑の森を横目に見ながら黙々と進んでいきます。横尾までで上高地から三時間、距離にすると11キロになります。距離的には槍ヶ岳まではここで半分。ここまではハイキングコースで歩きやすい道ですが、ここから先は徐々に山道になっていきます。

次なる目的地は槍沢ロッジ。横尾小屋からは約二時間の行程です。槍沢ロッジに着いた辺りで徐々に雲行きが怪しくなってきました。天気予報では昼は雨。これはまずいということで、雨の準備をしてさらに奥へ。少し険しくなった登山道を進んで行くと、残雪が現れてきます。さらに進んでいくと雪を纏う地面の割合が増えていき、残雪とは呼べない量になっていきます。森を抜け、開けた所に出ると、雄大な雪渓が姿を表します。六月と言えど、山はまだまだ冬の鎧を着ていました。しかし、日々気温と戦っている雪の鎧はすでに満身創痍。表面は黒く汚れ、至る所に亀裂が走り、その下を雪解けの水が流れていきます。手負いの雪山とは言え、相手は北アルプスの盟主槍ヶ岳。こちらもアイゼン、ピッケルを装備し、いざ雪渓へ。

これが予想以上に長かった。雨も止まずむしろ強くなる一方。そのせいで行動食もうまく取れず、完全にシャリばて(自転車で言うハンガーノック)。挙句の果てに足も傷めたっぽく、左のアキレス腱にちょっと違和感が。前を見ても雲で全く先が見えず、たまに見える黒い影を山小屋か!?と期待して近づくとただの岩だったり、突然忌野清志郎のJUMPを歌い出したり、なんていうかどうしようもないほどにグダグダになりながら、いつもはへばってる相棒に励まされ、雨の中、雪渓を登ること約四時間。なんとか槍ヶ岳山荘到着!

燕岳の時もそうでしたが、悪天候の中たどり着いた山小屋のありがたみは何者にも代えがたいですね。よかった、これで死ぬことはないみたいな。こんな表現もあながち大げさにならないのが山の怖いところ。650名収容可能な槍ヶ岳山荘もこの日は全部で十数名。パワフルな乾燥室のおかげで、ベタベタになった装備も全てカラカラに乾かすことが出来ました。体調のせいか軽い高山病の頭痛もありましたが、相棒と消灯時間ギリギリまで梅酒のお湯割りを飲みながら、どのテントを買うかで盛り上がりました。良き思い出。

着いてからも一向に止む気配のない雨。明日はどうなることやら。

二日目へ続きます。