@抜戸岳 [ Minolta RepoS ( with Kodac 400 ) ] Print by Rainroots
@焼岳 [ Minolta RepoS ( with Kodac 400 ) ] Print by Rainroots木工職人は木を使っていろんな物を生み出す。金工職人は金属を使っていろんなモノを作り出す。一方、家具デザイナーはいろんな素材を使って家具を考える。グラフィックデザイナーは平面で出来ることをまず最初に考えるのだろうか。ここにはちょっとした違いがある。
何か物を作るという時、いろんな素材や方法があり、また作れるものも多種多様にある。夏休みの自由研究は何をつくってもいい。だからみんな困る。何をつくろうかと。だから木で何か作ろうとか、昆虫を捕まえてなんかしようとか、方法を固定する。この木で何かつくろうとした時、固定した素材の「木」を「定数」と呼び、まだ定まっていない「木で作れる何か」は「変数」と呼ぶとする。素材も方法も結果も変数のままだとなにかとしんどい。考えることが多すぎるからだ。でも素材を木と定数にすると、木で何をつくろうかなと思考も進む。最近、この定数と変数の関係に興味がある。
きっかけは上の写真。山を登るようになってわかったことがある。登っている途中で仲間と食べるおにぎりや、頂上で沸かして飲むコーヒーがめちゃくちゃうまいのだ。そりゃもう、やばい、うまい!としか言えないほど。コメのひと粒ひと粒が、コーヒーの暖かさが体に染み入ってくる。でも食べているのはコンビニのおにぎりであり、インスタントのコーヒーだ。街ではあのコーヒー豆がおいしいだとか、魚沼産のこしひかりはやっぱり違うとかいろんな食の噂が聞こえてくる。確かにその噂は間違っていなくて、食べてみるとおいしいのだが、それはなにか記号化されたおいしさで、その動作はさながら噂の確認作業である。
グルメな人の場合、街を定数にして、その中で素材であったり、店であったりを変数にしてうまいものを探していく。一方、僕達の場合はコーヒーはインスタント、おにぎりはコンビニのものを定数にして、景色のいい場所や空腹度合いを変数にして、うまく食べれそうな場所を探していく。細かい話をすれば、コンビニのおにぎりと言っても、せっかくの登山だからいつもよりも少し高い、いいおにぎりを買っていたりするのだがそれは些細なハレの演出に過ぎず、一緒に持っていった普通の値段のおにぎりも同様にやっぱりうんまい。この二者の違いが面白く感じるのだ。
今の世の中で、一般的に変数になっているものは数値的、データ的なものが多いような気がする。雑誌等で紹介されているものは受け手が変わっても変化の少ない情報だ。でも、食べる相手であったり、場所、空気感、体調と言った人に近い、体温が感じれる要素は受け手によって大きく結果が変わる。変数がダイナミックに変わるものの方が結果がおもしろい。街でおいしい物を求め歩く事が悪ではもちろんないが、そこで見つけたものを次に定数にして、誰と食べようか、どこで食べようかと考えるのは楽しい。一番つまらないのは、定数も変数も自分の手を入れれない有り物にしてしまい、いつやっても、誰がやっても同じ結果になってしまうような事だ。
ここまでは主に変数に注目してきたが、実際は定数のほうが重要だ。なにせ決めたら変えられないものだから、ここは慎重になりたい。定数で重要なのがそれを長く固定しないということだと思う。今回はインスタントコーヒーだったけど、今度は紅茶にしてみようかなとか、定数を変えると同じことをしてもまた違ったものが見えてくる。
その切替が岐阜はやりやすいなぁと近頃思う。定数にも変数にもなりそうな要素がいろんなところに散らばっていて、その距離感とか数がちょうどいい。東京とか名古屋では要素はあっても距離が近すぎて気持ちを切り替えにくい。これ以上離れていても、これまた切り替えるのが億劫になる。そもそも物が多すぎて、眺めただけでお腹いっぱいになってしまう。これは単に岐阜の地理的な条件に依るところが大きい。少し行けば街があり、山があり、海があり、川がある。でもちょっと行かないとない。この岐阜には何も無いと揶揄されるバランスこそが切り替えに向いているのではないか。
この定数変数を切り替えながら人生を楽しむスタイルを岐阜から発信できないかなと山頂でコーヒーを飲みながら妄想しているのだ。